「ユダヤのベツレヘム」 牧師 佐藤 義子

/n[ルカによる福音書] 2章1-7節 1 そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た。 2 これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに行われた最初の住民登録である。 3 人々は皆、登録するためにおのおの自分の町へ旅立った。 4 ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。 5 身ごもっていた、いいなずけのマリアと一緒に登録するためである。 6 ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、 7 初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。 /nはじめに  ベツレヘムはパレスチナの中央山脈地帯に属するユダの町で、最も肥沃な地帯の一つです。北側の丘にはオリーブが茂り、東側のゆるやかな斜面には小麦が豊かに実りました。ベツレヘムは昔エフラタと呼ばれ、旧約聖書にはエフラタとベツレヘムの両方の名で出ています。ベツレヘムはダビデの出身地として知られ、さらに時代をさかのぼれば、ルツの夫の出身地でもありました。 /nルツ-ダビデ-マリアの夫  ルツ記の初めに「ききんが国を襲ったので、ある人が妻と二人の息子を連れてユダのベツレヘムからモアブの野に移り住んだ。その人の名をエリメレク、妻はナオミ、二人の息子はマフロンとキルヨンといい、ユダのベツレヘム出身のエフラタ族の者であった。」とあります。ナオミの夫エリメレクはその後亡くなり、二人の息子達はモアブの女性を妻に迎えますが、10年後には二人の息子も死んでしまいます。ベツレヘムのききんがおさまったことを知ったナオミは一人故郷に帰ることにして、若い二人の嫁には実家に戻るように説得します。ところが嫁の一人、ルツはナオミについていくと聞かず、ついにナオミは説得をあきらめルツを連れてベツレヘムに帰ります。ベツレヘムで落ち穂拾いに出かけたルツは、農夫達の後について畑に入ると、そこはたまたま夫の父エリメレクの親族ボアズの畑でした。やがてルツはボアズと結婚して男の子(オベド)を産み、オベドは成人してエッサイの父となり、エッサイの末の息子がダビデです。羊飼いだったダビデはやがてイスラエルの国王となり(BC1000)、このダビデの家から救い主が生まれるとの預言が与えられ、イスラエルの民は長い間、救い主(メシア)を待ち望んでいました。マタイ福音書の系図によれば、マリアの夫ヨセフはダビデから数えて26代目にあたります。 /n人口調査  今日の聖書には、ローマ皇帝から全住民に登録の勅令が出たとあります。人口調査です。強制的に出身地に戻っての登録のため、ナザレに住んでいたヨセフとマリアは120キロも離れたヨセフの出身地ベツレヘムに帰ることになりました。絵画等でマリアがろばに乗り、ヨセフがたずなをひいて歩く姿が描かれていますが、当時、臨月のマリアをつれての旅は、どんなに大変で、また危険が伴っていたことでしょう。 >> 「ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。」(6-7節) << /nべツレヘム 「エフラタのベツレヘムよお前はユダの氏族の中でいと小さき者。お前の中から、私のためにイスラエルを治める者が出る。」(ミカ書5:1) 預言者ミカ(BC750-686)は、神様がこの小さな町ベツレヘムをメシア誕生の場所として選ばれていることを預言しました。それから700年以上の年月を経て、イエス・キリストがベツレヘムでお生まれになった。これは、たまたまではなく、偶然でもなく、神がこの世の権力者の人口調査という計画を用いて、ベツレヘムのダビデの血をひく、さらにはモアブの女性ルツの血を引くヨセフという男性を父親として選び、婚約者マリアをベツレヘムまで導かれた、ということです。これは神様のご計画による約束の成就!以外の何ものでもありません。 /n飼い葉おけ  イエス様が誕生されて初めてのベッドが家畜の為の飼い葉桶でした。ユダヤ人として生まれたイエス様は、始めからローマ皇帝勅令によって旅の途中で誕生し、イスラエルの国の歩みの苦しさと貧しさと共に生きられました。飼い葉桶の理由を口語訳では、「客間には彼らのいる余地がなかったから」と説明しています。お腹の大きなマリアの為に自分のベッドを譲る人は誰もいなかった、ということでしょう。この世の権力からも富からも、そして人々の愛からも遠く離れたこの飼い葉桶に寝かされた幼子は、しかし神様の深いご計画の中で何の支障もなく、誰にも邪魔されず、神様の大いなる恵みの中で天から地上に降られたのでした。(後略)