「迫害の中の祈り」 佐藤義子 牧師

/n[エステル記] 4章11節-5章2節 4:11 「この国の役人と国民のだれもがよく知っているとおり、王宮の内庭におられる王に、召し出されずに近づく者は、男であれ女であれ死刑に処せられる、と法律の一条に定められております。ただ、王が金の笏を差し伸べられる場合にのみ、その者は死を免れます。三十日このかた私にはお召しがなく、王のもとには参っておりません。」 4:12 エステルの返事がモルデカイに伝えられると、 4:13 モルデカイは再びエステルに言い送った。「他のユダヤ人はどうであれ、自分は王宮にいて無事だと考えてはいけない。 4:14 この時にあたってあなたが口を閉ざしているなら、ユダヤ人の解放と救済は他のところから起こり、あなた自身と父の家は滅ぼされるにちがいない。この時のためにこそ、あなたは王妃の位にまで達したのではないか。」 4:15 エステルはモルデカイに返事を送った。 4:16 「早速、スサにいるすべてのユダヤ人を集め、私のために三日三晩断食し、飲食を一切断ってください。私も女官たちと共に、同じように断食いたします。このようにしてから、定めに反することではありますが、私は王のもとに参ります。このために死ななければならないのでしたら、死ぬ覚悟でおります。」 4:17 そこでモルデカイは立ち去り、すべてエステルに頼まれたとおりにした。 5:1 それから三日目のことである。エステルは王妃の衣装を着け、王宮の内庭に入り、王宮に向かって立った。王は王宮の中で王宮の入り口に向かって王座に座っていた。 5:2 王は庭に立っている王妃エステルを見て、満悦の面持ちで、手にした金の笏を差し伸べた。エステルは近づいてその笏の先に触れた。 /n[使徒言行録] 12章1-19節 1 そのころ、ヘロデ王は教会のある人々に迫害の手を伸ばし、 2 ヨハネの兄弟ヤコブを剣で殺した。 3 そして、それがユダヤ人に喜ばれるのを見て、更にペトロをも捕らえようとした。それは、除酵祭の時期であった。 4 ヘロデはペトロを捕らえて牢に入れ、四人一組の兵士四組に引き渡して監視させた。過越祭の後で民衆の前に引き出すつもりであった。 5 こうして、ペトロは牢に入れられていた。教会では彼のために熱心な祈りが神にささげられていた。 6 ヘロデがペトロを引き出そうとしていた日の前夜、ペトロは二本の鎖でつながれ、二人の兵士の間で眠っていた。番兵たちは戸口で牢を見張っていた。 7 すると、主の天使がそばに立ち、光が牢の中を照らした。天使はペトロのわき腹をつついて起こし、「急いで起き上がりなさい」と言った。すると、鎖が彼の手から外れ落ちた。 8 天使が、「帯を締め、履物を履きなさい」と言ったので、ペトロはそのとおりにした。また天使は、「上着を着て、ついて来なさい」と言った。 9 それで、ペトロは外に出てついて行ったが、天使のしていることが現実のこととは思われなかった。幻を見ているのだと思った。 10 第一、第二の衛兵所を過ぎ、町に通じる鉄の門の所まで来ると、門がひとりでに開いたので、そこを出て、ある通りを進んで行くと、急に天使は離れ去った。 11 ペトロは我に返って言った。「今、初めて本当のことが分かった。主が天使を遣わして、ヘロデの手から、またユダヤ民衆のあらゆるもくろみから、わたしを救い出してくださったのだ。」 12 こう分かるとペトロは、マルコと呼ばれていたヨハネの母マリアの家に行った。そこには、大勢の人が集まって祈っていた。 13 門の戸をたたくと、ロデという女中が取り次ぎに出て来た。 14 ペトロの声だと分かると、喜びのあまり門を開けもしないで家に駆け込み、ペトロが門の前に立っていると告げた。 15 人々は、「あなたは気が変になっているのだ」と言ったが、ロデは、本当だと言い張った。彼らは、「それはペトロを守る天使だろう」と言い出した。 16 しかし、ペトロは戸をたたき続けた。彼らが開けてみると、そこにペトロがいたので非常に驚いた。 17 ペトロは手で制して彼らを静かにさせ、主が牢から連れ出してくださった次第を説明し、「このことをヤコブと兄弟たちに伝えなさい」と言った。そして、そこを出てほかの所へ行った。 18 夜が明けると、兵士たちの間で、ペトロはいったいどうなったのだろうと、大騒ぎになった。 19 ヘロデはペトロを捜しても見つからないので、番兵たちを取り調べたうえで死刑にするように命じ、ユダヤからカイサリアに下って、そこに滞在していた。 /nはじめに  紀元前6世紀、バビロンの支配下からペルシャの支配下へと移った頃、ユダヤ人のモルデカイは、自分の娘として育ててきたエステルをペルシャ王の妃の候補者として王宮に送ります。エステルは王妃に選ばれますが、その後、王の高官ハマンがモルデカイに敵意を抱き、ユダヤ人を全滅させる為の法律を作成し王の許可をとります。この法律を知ったモルデカイは、エステルに、ユダヤ人の命を助けるために王に嘆願するように言付けます。しかしエステルは、王の召喚状がないのに出ていけば、王から金の杓(しゃく)を差し伸べられない限り殺されるという法律があることを伝えます。モルデカイはエステルを励まし、この時の為にエステルは王妃になったのだ、と手紙を書きます。 /nエステルの決断  エステルは、町にいる全てのユダヤ人を集めてエステルの為に3日3晩断食し、飲食を一切絶つようにモルデカイに頼み、自分も断食し、死ぬ覚悟で3日後、王の前に出ます。王はエステルに金の杓を伸べます。その後、ハマンの悪だくみは王の知るところとなりハマンは殺され、ユダヤ人は救われることになりました。ユダヤ民族存亡の危機の時、命をかけた祈りが捧げられ、その祈りの中でエステルが起こした行動を神様は導かれました。 /n神様のなさったわざ  本日の使徒言行録は、ローマ帝国支配下時代、ユダヤ人によるキリスト教徒への迫害が起こっていた時のことです。ヘロデ王はユダヤ教に改宗し、宗教的指導者層の歓心を買い、自分の人気を高めようと使徒ヤコブを剣で殺し、さらにペトロをも捕えました。教会に連なる信徒達は、ヨハネの母マリアの家に集まり、牢にいるペトロの為に、ひたすら祈りをささげていました。ペトロが王の前に引き出される前夜、突然、光が牢の中を照らし、神の使いが眠っていたペトロの脇腹をつついて起こし、鎖が手からはずれ、天使の誘導によって、全ての監視所を通り抜けて町に通じる鉄の門までくると、門がひとりでに開き、そこを出て町に出た時、天使が離れて行きました。ペトロ自身、何が起こっているのかわからない状態の中で、ふと我に返った時、これら一連の出来事は、すべて神様のなさったわざであることを理解しました。 /n「主が牢から連れ出してくださった」  ペトロは、すぐヨハネの母マリアの家に行き、門を叩きます。そしてペトロの為に祈っていた大勢の人達に、神様が彼になした不思議な導きを語り、さらに、他の人々にも伝えるように言って、彼はそこを出ていきます。そこにとどまれば危険がその家にもやってくるからでしょう。又、ペトロが牢から出された救いの出来事を、もっと多くの人々に伝えるためでもあったでしょう。この出来事は、 迫害の中にあっても、神様が共にいて下さる「あかし」でありました。 /n逆境の中で  私達の人生の中で、事柄が私達の願う方向にはいかず逆に進んでいく経験をお持ちの方は多いでしょう。神様の支配は人間の願望に支配されるのではなく、私達の願いを打ち破り、苦しく辛い経験へと向かわせることがあります。にもかかわらず、神様のこの世における支配、統治は今なお続き、この世が存続する限り神様のわざが止むことはありません。私達は見えることのみに心を動かされ、慌てることが多いものですが、聖書は私達に真剣に祈ることを教えています。神の御心に沿う祈りは必ずきかれます。祈った通りにならなくても、祈りが無駄になることはありません。神様は、神様の主権のもとに、私達の祈りを聞き、私達をご計画に従って最善に導かれます。この信仰が私達に与えられています。 >> 「どんなことでも、思い煩うのはやめなさい。何事につけ、感謝を込めて祈りと願いをささげ、求めているものを神に打ち明けなさい。そうすれば、あらゆる人知を超える神の平和が、あなた方の心と考えとをキリスト・イエスによって守るでしょう。」(フィリピ書4:6-7) <<