「生きておられる神」 佐藤義子 牧師

/n[詩編] 19編2-7節 2 天は神の栄光を物語り/大空は御手の業を示す。 3 昼は昼に語り伝え/夜は夜に知識を送る。 4 話すことも、語ることもなく/声は聞こえなくても 5 その響きは全地に/その言葉は世界の果てに向かう。そこに、神は太陽の幕屋を設けられた。 6 太陽は、花婿が天蓋から出るように/勇士が喜び勇んで道を走るように 7 天の果てを出で立ち/天の果てを目指して行く。その熱から隠れうるものはない。 /n[使徒言行録] 14章8-20節 8 リストラに、足の不自由な男が座っていた。生まれつき足が悪く、まだ一度も歩いたことがなかった。 9 この人が、パウロの話すのを聞いていた。パウロは彼を見つめ、いやされるのにふさわしい信仰があるのを認め、 10 「自分の足でまっすぐに立ちなさい」と大声で言った。すると、その人は躍り上がって歩きだした。 11 群衆はパウロの行ったことを見て声を張り上げ、リカオニアの方言で、「神々が人間の姿をとって、わたしたちのところにお降りになった」と言った。 12 そして、バルナバを「ゼウス」と呼び、またおもに話す者であることから、パウロを「ヘルメス」と呼んだ。 13 町の外にあったゼウスの神殿の祭司が、家の門の所まで雄牛数頭と花輪を運んで来て、群衆と一緒になって二人にいけにえを献げようとした。 14 使徒たち、すなわちバルナバとパウロはこのことを聞くと、服を裂いて群衆の中へ飛び込んで行き、叫んで 15 言った。「皆さん、なぜ、こんなことをするのですか。わたしたちも、あなたがたと同じ人間にすぎません。あなたがたが、このような偶像を離れて、生ける神に立ち帰るように、わたしたちは福音を告げ知らせているのです。この神こそ、天と地と海と、そしてその中にあるすべてのものを造られた方です。 16 神は過ぎ去った時代には、すべての国の人が思い思いの道を行くままにしておかれました。 17 しかし、神は御自分のことを証ししないでおられたわけではありません。恵みをくださり、天からの雨を降らせて実りの季節を与え、食物を施して、あなたがたの心を喜びで満たしてくださっているのです。」 18 こう言って、二人は、群衆が自分たちにいけにえを献げようとするのを、やっとやめさせることができた。 19 ところが、ユダヤ人たちがアンティオキアとイコニオンからやって来て、群衆を抱き込み、パウロに石を投げつけ、死んでしまったものと思って、町の外へ引きずり出した。 20 しかし、弟子たちが周りを取り囲むと、パウロは起き上がって町に入って行った。そして翌日、バルナバと一緒にデルベへ向かった。 /nはじめに  今日の聖書には、リストラ(地名)で起こった3つの話が記されています。一つは、生まれた時から歩いたことがなかった男の人がいやされた話。二つ目は、パウロとバルナバが、神の化身と間違えられたこと。三つ目は、追いかけてきたユダヤ人達により石を投げつけられ、倒れたことです。 /nまことの癒し主  9節に、「この人が、パウロの話を聞いていた。パウロは彼を見つめ、いやされるのにふさわしい信仰があるのを認め」たとあります。ロマ書に、<span style="font-weight:bold;">「聞いたことのない方を、どうして信じられよう」(10:14)</span>とあります。この男の人はパウロの話に耳を傾けました。信仰はまず聞くことから始まります。そしてこの人は聞いたことを信じて聴き続けました。パウロは彼を見つめ、彼の信仰を見て、彼の信仰がいやされるにふさわしい信仰であることを認めて、大声で「自分の足でまっすぐに立ちなさい」と呼びかけました。この呼びかけは、神様から聖霊をいただいているパウロを通しての、神ご自身の呼びかけでもあります。この人は、この呼びかけによって、生まれて初めて「自分の足で立ち、躍り上がって歩き出し」ました。14章の3節に<span style="font-weight:bold;">「主は彼らの手を通してしるしと不思議な業を行い、その恵みの言葉を証しされたのである」</span>とありますが、この不思議な業の主体は常に「主」イエス・キリストであることを、使徒言行録は伝えています。これによって賛美され、崇められるべきお方は神であり、主キリストです。 /n伝説  この地方には、かつてゼウス神と、神の使いヘルメスが変装して地上を訪問した時、神と知らずに冷たく迎えた者と、暖かく迎えた者についての伝説がありました。人々は今目の前で起こったいやしの行為者であるパウロとバルナバを神の化身として崇め、二人にいけにえを捧げようとしました。それを知った二人は、驚きと嘆きで服を裂き、群衆の中に飛び込んでいきました。そして、群衆の誤った神に対する考え方を正し、天地創造主である本当の神、「生ける神」に立ち帰るように叫びました。 /n「生ける神」  生ける神とは「天と地と海と、その中にある全てのものを造られた神」(15節)のことです。この神様と比べるなら人間の手による偶像は無の世界、死の世界に属します。生ける神様は、異邦人にはこれまで彼ら自身が悪の道を歩むに任せておられたので、異邦人は、神について勝手に自分達で考え出した宗教を作り、空しい偶像を作り出しました。しかし神様は異邦人にご自分を現す手段として、天から雨を降らせ、雨と共に土を豊かにして実りの季節を与え、食物を得ることによって彼らの心を喜びで満たして、神様のいつくしみを表わしてきました。この、心に喜びが与えられるという神様のいつくしみの業こそ神様のしるしであるから、今こそ空しいことを捨て去り、パウロ達を神々として祭るような、馬鹿げた愚かな、古い宗教に終止符を打ち、生きて今も働いておられる神様に立ち帰るよう説得したのでした。 /n石打ち  この後、伝道を阻止しようとやって来たユダヤ人達が、又もや群衆を扇動してパウロ達に石を投げつけました。パウロは倒れたまま動かなくなったので、ユダヤ人達は死んだと思い町の外へと引きずり出しました。20節にはパウロの周りを「弟子達」が取り囲んだとあります。「弟子達」とは新しくイエス・キリストを信じた人々です。このリストラの地でも、新しいキリスト者の群が生まれていたのです。死んだように見えたパウロでしたが、神はパウロを殺させませんでした。彼は起き上がり、町に再び入り、翌日には、次の伝道地デルベに向かいました。ここに、パウロの命を守り、起き上がらせ、歩く力を与えておられる主イエス・キリストの力を見ます。伝道は着実に前進していきました。