「神の守り」 牧師 佐藤 義子

/n[詩編]1編1-6節 1 いかに幸いなことか/神に逆らう者の計らいに従って歩まず/罪ある者の道にとどまらず/傲慢な者と共に座らず 2 主の教えを愛し/その教えを昼も夜も口ずさむ人。 3 その人は流れのほとりに植えられた木。ときが巡り来れば実を結び/葉もしおれることがない。その人のすることはすべて、繁栄をもたらす。 4 神に逆らう者はそうではない。彼は風に吹き飛ばされるもみ殻。 5 神に逆らう者は裁きに堪えず/罪ある者は神に従う人の集いに堪えない。 6 神に従う人の道を主は知っていてくださる。神に逆らう者の道は滅びに至る。 /n[使徒言行録]23章12-35節 12 夜が明けると、ユダヤ人たちは陰謀をたくらみ、パウロを殺すまでは飲み食いしないという誓いを立てた。 13 このたくらみに加わった者は、四十人以上もいた。 14 彼らは、祭司長たちや長老たちのところへ行って、こう言った。「わたしたちは、パウロを殺すまでは何も食べないと、固く誓いました。 15 ですから今、パウロについてもっと詳しく調べるという口実を設けて、彼をあなたがたのところへ連れて来るように、最高法院と組んで千人隊長に願い出てください。わたしたちは、彼がここへ来る前に殺してしまう手はずを整えています。」 16 しかし、この陰謀をパウロの姉妹の子が聞き込み、兵営の中に入って来て、パウロに知らせた。 17 それで、パウロは百人隊長の一人を呼んで言った。「この若者を千人隊長のところへ連れて行ってください。何か知らせることがあるそうです。」 18 そこで百人隊長は、若者を千人隊長のもとに連れて行き、こう言った。「囚人パウロがわたしを呼んで、この若者をこちらに連れて来るようにと頼みました。何か話したいことがあるそうです。」 19 千人隊長は、若者の手を取って人のいない所へ行き、「知らせたいこととは何か」と尋ねた。 20 若者は言った。「ユダヤ人たちは、パウロのことをもっと詳しく調べるという口実で、明日パウロを最高法院に連れて来るようにと、あなたに願い出ることに決めています。 21 どうか、彼らの言いなりにならないでください。彼らのうち四十人以上が、パウロを殺すまでは飲み食いしないと誓い、陰謀をたくらんでいるのです。そして、今その手はずを整えて、御承諾を待っているのです。」 22 そこで千人隊長は、「このことをわたしに知らせたとは、だれにも言うな」と命じて、若者を帰した。 23 千人隊長は百人隊長二人を呼び、「今夜九時カイサリアへ出発できるように、歩兵二百名、騎兵七十名、補助兵二百名を準備せよ」と言った。 24 また、馬を用意し、パウロを乗せて、総督フェリクスのもとへ無事に護送するように命じ、 25 次のような内容の手紙を書いた。 26 「クラウディウス・リシアが総督フェリクス閣下に御挨拶申し上げます。 27 この者がユダヤ人に捕らえられ、殺されようとしていたのを、わたしは兵士たちを率いて救い出しました。ローマ帝国の市民権を持つ者であることが分かったからです。 28 そして、告発されている理由を知ろうとして、最高法院に連行しました。 29 ところが、彼が告発されているのは、ユダヤ人の律法に関する問題であって、死刑や投獄に相当する理由はないことが分かりました。 30 しかし、この者に対する陰謀があるという報告を受けましたので、直ちに閣下のもとに護送いたします。告発人たちには、この者に関する件を閣下に訴え出るようにと、命じておきました。」 31 さて、歩兵たちは、命令どおりにパウロを引き取って、夜のうちにアンティパトリスまで連れて行き、 32 翌日、騎兵たちに護送を任せて兵営へ戻った。 33 騎兵たちはカイサリアに到着すると、手紙を総督に届け、パウロを引き渡した。 34 総督は手紙を読んでから、パウロがどの州の出身であるかを尋ね、キリキア州の出身だと分かると、 35 「お前を告発する者たちが到着してから、尋問することにする」と言った。そして、ヘロデの官邸にパウロを留置しておくように命じた。 /nはじめに  今日の新約聖書は、見出しに「パウロ暗殺の陰謀」とあるように、ユダヤ人によってパウロを殺す陰謀が企てられましたが、それは失敗に終わり、パウロの命が守られた出来事が記されています。最初の段落には多くの人々が登場します。まずパウロの命を狙う40人以上のユダヤ人達。次に彼らが自分達の陰謀に加担するように頼みにいった祭司長および長老達。そして暗殺計画を聞き込み、それをパウロに知らせたパウロの甥。それを聞いたパウロが、千人隊長に知らせる為に呼んだ百人隊長。そしてパウロの甥から直接暗殺計画を聞いて、パウロの命を守る為に動いた千人隊長です。 /nパウロを巡る人々の思惑  陰謀を企てたユダヤ人達は、ユダヤの最高法院(最高議会)においてパウロを有罪判決に持っていこうとした人達です。彼らには、パウロが律法をないがしろにしており、生かしておいては大変なことになるという危機感がありました。そこで神殿にいたパウロを捕え、殺そうと暴行を加えていたところ、騒ぎを聞きつけたローマの守備隊によってパウロは連行されてしまいました。当時エルサレムはローマの属州になっており、治安維持にあたるローマの守備隊は、暴動が起こることを阻止する義務を担っていました。そのため千人隊長は、ユダヤ人がパウロを訴えている内容を詳しく知りたいと思い、ユダヤの最高議会を開いて審議させました。ところが、そこではパウロが有罪かどうかよりも、パウロと同じ復活信仰を持つファリサイ派と復活を認めないサドカイ派との間に激しい議論が起こり、結局パウロの身の安全を確保するため、パウロは兵営に戻されました。 /n殺すまでは飲み食いしないとの誓い  パウロを有罪判決に出来なかったユダヤ人達は、自分達の感情がおさまらず、何としてでもパウロの命を亡きものにしようと、ひそかにパウロを殺す計画をたて、殺すまでは飲み食いしないと固く誓いを立てたのです。その数は40人以上にのぼりました。彼らは自分を呪いの下に置き、「誓いを果たさなかったら自分は呪われよ」という覚悟です。 /n暗殺計画  彼らはまず、ユダヤ教指導者であった祭司長と長老達の協力を取り付けるため出かけて行き、彼らに、千人隊長の所に行って最高議会を再び開いてもらうよう、議会関係者と一緒に働きかけて欲しいと頼みました(21節参照)。パウロのことで議会が開かれれば、出頭途中のパウロを襲い、闇討ちにする計画だと伝えました。神に敵対する勢力は、人間の知恵を出し合い、外側からは良く練られた計略のように見えますが、どこかに必ずほころびが出てくるものです。 /n人間の計画と神様のなさること  この40人以上のユダヤ人達と接触していた人々の中にパウロの甥(姉妹の子)がおりました。彼はこの計画を聞いてすぐパウロに伝えました。パウロは、その暗殺計画を千人隊長に直接告げる必要があると判断し、百人隊長を呼んで、甥を千人隊長のもとに連れて行くように頼みました。千人隊長は、誰にも知られないように配慮をもってこの若者から事情聴取をしました。そして内容の重さを考え、この若者に、陰謀のことを口止めし、千人隊長は自分のするべき仕事にすぐとりかかりました。それは、パウロの身柄をエルサレムの兵営にとどめておくのではなく、カイサリアに駐留するローマ総督のもとに送りだすという仕事でした。 /n神の守り  パウロは再び千人隊長の機転によって、命の危険から守られました。しかし暗殺計画からパウロを守ったのは神です。神が陰謀を打ち砕いたのです。創世記に「アブラハムのイサク奉献」の出来事が記されていますが(22章)、これは私達に「神が備えて下さる」との信仰を教えています。神様は、人間の必要や危急や困難に当面した時、神様の知恵と全能と慈しみをもって、あらかじめ備え配慮して下さいます(神様の摂理)。パウロはこの後カイサリアへ護送され、ローマへの宣教の道が、一歩前進しました。 私達の歩みも同じように「神の守り」の中にあります。