「船出」牧師 佐藤義子

/n[詩編]46編2-8節 2 神はわたしたちの避けどころ、わたしたちの砦。苦難のとき、必ずそこにいまして助けてくださる。 3 わたしたちは決して恐れない/地が姿を変え/山々が揺らいで海の中に移るとも 4 海の水が騒ぎ、沸き返り/その高ぶるさまに山々が震えるとも。〔セラ 5 大河とその流れは、神の都に喜びを与える/いと高き神のいます聖所に。 6 神はその中にいまし、都は揺らぐことがない。夜明けとともに、神は助けをお与えになる。 7 すべての民は騒ぎ、国々は揺らぐ。神が御声を出されると、地は溶け去る。 8 万軍の主はわたしたちと共にいます。ヤコブの神はわたしたちの砦の塔。〔セラ /n[使徒言行録]27章1-26節 1 わたしたちがイタリアへ向かって船出することに決まったとき、パウロと他の数名の囚人は、皇帝直属部隊の百人隊長ユリウスという者に引き渡された。 2 わたしたちは、アジア州沿岸の各地に寄港することになっている、アドラミティオン港の船に乗って出港した。テサロニケ出身のマケドニア人アリスタルコも一緒であった。 3 翌日シドンに着いたが、ユリウスはパウロを親切に扱い、友人たちのところへ行ってもてなしを受けることを許してくれた。 4 そこから船出したが、向かい風のためキプロス島の陰を航行し、 5 キリキア州とパンフィリア州の沖を過ぎて、リキア州のミラに着いた。 6 ここで百人隊長は、イタリアに行くアレクサンドリアの船を見つけて、わたしたちをそれに乗り込ませた。 7 幾日もの間、船足ははかどらず、ようやくクニドス港に近づいた。ところが、風に行く手を阻まれたので、サルモネ岬を回ってクレタ島の陰を航行し、 8 ようやく島の岸に沿って進み、ラサヤの町に近い「良い港」と呼ばれる所に着いた。 9 かなりの時がたって、既に断食日も過ぎていたので、航海はもう危険であった。それで、パウロは人々に忠告した。 10 「皆さん、わたしの見るところでは、この航海は積み荷や船体ばかりでなく、わたしたち自身にも危険と多大の損失をもたらすことになります。」 11 しかし、百人隊長は、パウロの言ったことよりも、船長や船主の方を信用した。 12 この港は冬を越すのに適していなかった。それで、大多数の者の意見により、ここから船出し、できるならばクレタ島で南西と北西に面しているフェニクス港に行き、そこで冬を過ごすことになった。 13 ときに、南風が静かに吹いて来たので、人々は望みどおりに事が運ぶと考えて錨を上げ、クレタ島の岸に沿って進んだ。 14 しかし、間もなく「エウラキロン」と呼ばれる暴風が、島の方から吹き降ろして来た。 15 船はそれに巻き込まれ、風に逆らって進むことができなかったので、わたしたちは流されるにまかせた。 16 やがて、カウダという小島の陰に来たので、やっとのことで小舟をしっかりと引き寄せることができた。 17 小舟を船に引き上げてから、船体には綱を巻きつけ、シルティスの浅瀬に乗り上げるのを恐れて海錨を降ろし、流されるにまかせた。 18 しかし、ひどい暴風に悩まされたので、翌日には人々は積み荷を海に捨て始め、 19 三日目には自分たちの手で船具を投げ捨ててしまった。 20 幾日もの間、太陽も星も見えず、暴風が激しく吹きすさぶので、ついに助かる望みは全く消えうせようとしていた。 21 人々は長い間、食事をとっていなかった。そのとき、パウロは彼らの中に立って言った。「皆さん、わたしの言ったとおりに、クレタ島から船出していなければ、こんな危険や損失を避けられたにちがいありません。 22 しかし今、あなたがたに勧めます。元気を出しなさい。船は失うが、皆さんのうちだれ一人として命を失う者はないのです。 23 わたしが仕え、礼拝している神からの天使が昨夜わたしのそばに立って、 24 こう言われました。『パウロ、恐れるな。あなたは皇帝の前に出頭しなければならない。神は、一緒に航海しているすべての者を、あなたに任せてくださったのだ。』 25 ですから、皆さん、元気を出しなさい。わたしは神を信じています。わたしに告げられたことは、そのとおりになります。 26 わたしたちは、必ずどこかの島に打ち上げられるはずです。」 /nはじめに  受難節第3聖日の礼拝を、こうしてご一緒に守れることを感謝致します。私達は今回の大地震によって何を学び、又、何を神様からいただいたでしょうか。私達は神様から戴いた恵みを忘れやすいので、今日は先ず、私の見た「神様の恵み」をお話したいと思います。 /nインマヌエル(神、我らと共にいます)  大地震の後、この伝道所には三人の若い妻達が集まりました。彼女達の夫はそれぞれ県外に出張中でしたので、電話が通じず、安否確認が困難な状態に陥りました。電話をかけることが出来なかった中で、突然博子姉宅の電話のベルが鳴りました。後でわかったことですが、博子姉宅の固定電話は、高齢で独り暮らしの為の緊急用電話サービスの契約により、非常時でも受信のみは可能だったのです。電話は神奈川にいる長男の携帯からでした。彼もまさかこの電話が通じるとは思わずにかけたそうです。以来、電話不通の間、外部との連絡が、この固定電話と携帯電話に託されました。それによって、三人の妻達の家族や実家に安全を知らせることが出来、又、彼女達の夫との連絡の橋渡しをすることになりました。あの不安な時間帯の中で、私達はこのようにして、神様から大きな恵みをいただいたのです。 さらに神様は、博子姉が昔 来客用にと作った沢山の布団などの寝具や、又、K兄(含J兄姉)の備蓄していたお米や食料、薪や炭、練炭などの燃料の備蓄を用い、この地域の水を守り(断水がなかった)、お世話する若い力も備えて下さり、子供を含め13人の共同生活を可能にして下さいました。 その他、紹介しきれない数々の恵みを見ました。その他の会員の方々も、それぞれ神様の特別な恵みをいただいて守られたことを伺っております。恵みを数え上げ、神様を賛美し、今、交読した詩編20篇8-9を告白したいと思います。 「<span style="font-weight:bold;">戦車を誇る者もあり、馬を誇る者もあるが、我らは、我らの神、主の御名を唱える。彼らは力を失って倒れるが 我らは力に満ちて立ちあがる。</span>」 /n船出  今朝の聖書は、パウロがいよいよローマ皇帝に直訴するため、囚人としてイタリアに向かって船出したところから始まります。船旅の責任者は、百人隊長ユリウスでした。彼はパウロを親切に扱い友人の所へ行くことを許可してくれました。このことによりパウロがどれほど信頼され、特別扱いされていたか知ることが出来ます。パウロの友人とはキリスト者の仲間のことで、おそらくここでもパウロは福音を語り、勧め、励まし、他方、仲間達は、長い船旅を続けるパウロ達の為に配慮したと考えられます。このようにキリスト者は、どこに行っても同じ信仰のゆえに、神の家族として主にある交わりと、神様の恵みが豊かに注がれるのです。 /n船路  この船旅は非常に厳しい苛酷なものとなりました。船には276人乗っていましたが、冬の初めに何週間も吹き荒れる嵐「エウラキロン」の中に突入してしまったのです。船は流れにまかせ、積み荷も船具も投げ捨て、幾日もの間、太陽も星も見えず、暴風が激しく吹きすさぶため、人々は絶望状態の中に置かれたのでした。その時、囚人パウロが語りました。「元気を出しなさい。船は失うが、皆さんのうち誰一人として命を失う者はないのです。私が仕え、礼拝している神からの天使がこう言われました。『<span style="font-weight:bold;">パウロ、恐れるな。あなたは皇帝の前に出頭しなければならない。神は、一緒に航海しているすべての者を、あなたに任せて下さったのだ。</span>』私に告げられたことは、その通りになります。」 私達の信じる神は、このようにいつも「恐れるな」と私達に語ります。