12月11日の説教要旨 「救いの先駆者」  平賀真理子牧師

士師記13214マタイ福音書11219

 はじめに

今日の新約聖書の箇所はイエス様に洗礼を授けるという重要な役割を果たした「洗礼者ヨハネ」がイエス様に質問するために自分の弟子達を派遣するところから始まります。

 預言された「救い主」のなさること

洗礼者ヨハネの質問は「イエス様が来るべき方かどうか。それとも、他の人が来るべき方か。」ということでした。「来るべき方」とは、当時のユダヤ人達が信じていた、神様が送ってくださる「救い主」のことです。神様の御言葉を預かる預言者達によって、「神様がこの世に救い主を送ってくださる」と人々は知らされていました。その預言の一つが、イザヤ書61章にあり、その冒頭の1節は特に有名でした。救い主がこの世に来られたら何をなさるのか書かれています。「貧しい人に良い知らせをもたらす・打ち砕かれた心を包む・捕らわれた人には自由をくださる・つながれている人には解放を告知してくださる」のです。

 イザヤの預言がイエス様の御許で実現していた!

イエス様の御許で、イザヤ書の預言どおりのことが行われていました。多くの人々が病いから癒され、イエス様との出会いで希望を持つようになりました。そんなことができる人は、それ以前に存在しませんでした。ユダヤ教を教える先生達はいましたが、イエス様のなさった御業は、神様の御力をもってしかできないこと、つまり、「神の御子・救い主」にしかできないことでした。ヨハネの弟子達は、イエス様の所へ来て、現実を見たのであり、それをヨハネに伝えるようにイエス様はおっしゃいました。それは、預言を当然知っているヨハネが、弟子達の証言を聞き、イエス様が預言された「救い主」だと自ら悟ってほしいと願ってのことでしょう。

 「主の道を備える者」としての洗礼者ヨハネ

イエス様が公生涯を始められる前に、ユダヤ人達や周辺住民は、洗礼者ヨハネの悔い改めを勧める話を聞き、その洗礼を受ける人も多くいました(マタイ3:1-12)。「救い主」が現れる前に、「主の道を備える者」としての役割をヨハネは果たしていたのです(イザヤ書40:3)。人々が悔い改めに本当に励んでいたら、救い主が来られた時、人々の心の受け入れ準備ができているであろうと、神様が計画なさったのだと推測できます。だから、イエス様はヨハネについて、人間の中で一番偉大だと語られました。

 「救い」の新しい御計画

しかし、その直後に、こう語られました。「天の国で最も小さい者でも、ヨハネより偉大である。」。これは、神様の救いのご計画が、古い形から新しい形に移ったことが伏線として隠されています。神様は人間の救いのご計画を、最初は、ユダヤ民族を中心とした救いとされました。しかし、人々の不信仰で救いの実現が遠のきました。そこで、神様は「救い主」を信じる者達を中心とした救いのご計画を新しく立てられました。救い主イエス様を信じる者達が集うのが「神の国」「天の国」です。だから、最初の救いの計画の中にいたヨハネよりも、救い主を信じるという新しい救いの形で救われる者達の方を、主が偉大な者達として喜んでくださることが示されています。

 洗礼者ヨハネの先駆者

新しい救いのためには「救い主」が重要です。そして、その救い主の先駆けとして「主の道を備える者」だったヨハネは、救い主イエス様と繋がった存在として、神様のご計画のうちで重要な存在でした。神様は、救い主イエス様だけでなく、そのヨハネにも、先駆者を置かれました。ヨハネの先駆者として有名なのは、預言者エリヤです。ユダヤ人達は、エリヤを最高の預言者として尊敬しました。

 サムソン

しかし、エリヤだけでなく、それより以前のサムソンというリーダー(「士師」)も、ヨハネの先駆者として挙げることができます。今日の旧約聖書箇所でわかるとおり、生まれる前から(母親の胎内に入る時から)、神様のご計画のうちにあって、神様の御業を担う人間として、神様が特別に愛されたことがわかります。サムソンは、当時のユダや人の敵だったペリシテ人に打ち勝つために神様が初めから準備された人物です。このように、神様の救いの御業は、幾重にも重なった準備の上になされることが示されています。

 私達の先駆者、私達が先駆者!

このことは、救い主イエス様を信じて「神の国の民」とされている私達信仰者にも言えます。私達の救いのために神様がご計画くださり、誰か先駆者を通して、私達を救ってくださいました。神様が幾重にも準備してくださっているのです。それほどまでに憐れみ深い神様に感謝しましょう。そして、今度は私達が誰かの先駆者になれるよう、学び続け、祈り続けて参りましょう。