「族長の歩み(2)-イサク・ヤコブ・ヨセフ」佐藤義子牧師

/n[創世記] 45章1-8節 1 ヨセフは、そばで仕えている者の前で、もはや平静を装っていることができなくなり、「みんな、ここから出て行ってくれ」と叫んだ。だれもそばにいなくなってから、ヨセフは兄弟たちに自分の身を明かした。 2 ヨセフは、声をあげて泣いたので、エジプト人はそれを聞き、ファラオの宮廷にも伝わった。 3 ヨセフは、兄弟たちに言った。「わたしはヨセフです。お父さんはまだ生きておられますか。」兄弟たちはヨセフの前で驚きのあまり、答えることができなかった。 4 ヨセフは兄弟たちに言った。「どうか、もっと近寄ってください。」兄弟たちがそばへ近づくと、ヨセフはまた言った。「わたしはあなたたちがエジプトへ売った弟のヨセフです。 5 しかし、今は、わたしをここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする必要はありません。命を救うために、神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのです。 6 この二年の間、世界中に飢饉が襲っていますが、まだこれから五年間は、耕すこともなく、収穫もないでしょう。 7 神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのは、この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、大いなる救いに至らせるためです。 8 わたしをここへ遣わしたのは、あなたたちではなく、神です。神がわたしをファラオの顧問、宮廷全体の主、エジプト全国を治める者としてくださったのです。 /n[使徒言行録] 7章8-16節 8 そして、神はアブラハムと割礼による契約を結ばれました。こうして、アブラハムはイサクをもうけて八日目に割礼を施し、イサクはヤコブを、ヤコブは十二人の族長をもうけて、それぞれ割礼を施したのです。 9 この族長たちはヨセフをねたんで、エジプトへ売ってしまいました。しかし、神はヨセフを離れず、 10 あらゆる苦難から助け出して、エジプト王ファラオのもとで恵みと知恵をお授けになりました。そしてファラオは、彼をエジプトと王の家全体とをつかさどる大臣に任命したのです。 11 ところが、エジプトとカナンの全土に飢饉が起こり、大きな苦難が襲い、わたしたちの先祖は食糧を手に入れることができなくなりました。 12 ヤコブはエジプトに穀物があると聞いて、まずわたしたちの先祖をそこへ行かせました。 13 二度目のとき、ヨセフは兄弟たちに自分の身の上を明かし、ファラオもヨセフの一族のことを知りました。 14 そこで、ヨセフは人を遣わして、父ヤコブと七十五人の親族一同を呼び寄せました。 15 ヤコブはエジプトに下って行き、やがて彼もわたしたちの先祖も死んで、 16 シケムに移され、かつてアブラハムがシケムでハモルの子らから、幾らかの金で買っておいた墓に葬られました。 /nはじめに  前回に続き、ステファノが語った説教から「族長」について学びたいと思います。アブラハムは神様の言葉に従い、家族・親族の住むハランの町を出て神様がアブラハムの子孫に与えると約束して下さった「カナン」に移り住みました。やがて息子イサクの妻を迎える時、アブラハムはしもべをハランに遣わして、自分の親族から息子の妻を見つけてカナンに連れて来るように命じます(創世記24章)。アブラハムが息子イサクの結婚に際し、カナンの地を「神様の約束の地」として受け、子孫がここに住み続けることに、どれほどこだわったかを聖書から知ることが出来ます。イサクは、しもべが連れて来たリベカと結婚し、双子の息子(兄のエサウと弟のヤコブ)が与えられます。息子達が成人した後、弟のヤコブは兄エサウが継ぐはずの家督や祝福を奪ってしまいます。その結果、エサウはヤコブに殺意を抱くようになり、ヤコブは兄から逃れてハランにいる母の兄(ラバン)の家に向かいます。途中ヤコブは野宿をして夢を見ます。天に達する階段を御使い達が上り下りし、神様から「私はあなたと共にいる。私はあなたを守り、必ずこの土地に連れ帰る」(同28:15)との約束を受けます。ヤコブは伯父ラバンのもとで苦労して働き、伯父の二人の娘を妻にもらい、12人の息子が与えられました。「ヨセフ」は妻ラケルから生まれ、11番目の息子です。 /nヨセフの生涯  ヨセフは父ヤコブが年を取って生まれた子であり、大変可愛がられたことで、(又、兄達の怒りをかうような夢の話をしたこともあり)兄達からねたまれ、憎まれました。ある時ヨセフが父のいいつけで羊を飼う兄達の様子を見に行った時、兄達はヨセフを捕えてエジプトに向かう隊商に銀20枚で、奴隷として売り、父ヤコブにはヨセフは野獣に食い殺されたと思わせます(創世記37)。 エジプトに売られたヨセフは宮廷の役人に仕えることになりますが、神がヨセフと共におられたので、すべてのことがうまく運びました。ところが仕えている役人の妻のうその証言により監獄に入れられます。そこで、もと給仕役の長の夢を解き明かしたことからエジプトの王様の見た夢をも解き明かすことになり、彼は監獄から出されます。その後、王様に仕え大臣となり国の重要な仕事の責任を任されるまでになります。ヨセフは神に与えられた知恵と力により、やがて起こる飢饉に備えエジプトの国に十分な食料を蓄えさせます。飢饉がひどくなった頃、ヨセフの兄達はカナンから食料を求めにエジプトにやってきます。そして大臣の前にひれふします。兄達は大臣が弟ヨセフであるとは気付きません。二度目の再会の時にヨセフはついに自分のことを兄達に打ち明け「神が私をあなた達より先にお遣わしになったのは、この国にあなた達の残りの者を与え、あなた達を生き永らえさせて、大いなる救いに至らせるためです。私をここへ遣わしたのは、あなた達ではなく、神です。」と語りました(創世記45:7-8)。そしてヨセフは家族・親族をエジプトに呼び寄せ,生活の面倒を見て兄達にも優しく接しました(同50:21)。 /nステファノの証言  ステファノは、アブラハム・イサク・ヤコブ・ヨセフの族長達を始めとする民族の歴史が「神様の恵みのわざの歴史」であると同時に神様がイスラエルを救う為に遣わした人達への、民の「反発の歴史」でもあることに気付かせようとしています。議会でステファノの説教を聞いているユダヤ人達が、ステファノの言葉に素直に耳を傾けたなら、自分達が正しいと信じてやっていることが結果的に神様に逆らうことになることを学んだことでしょう。聖書は常に、神様は生きておられ全てのことは神様のご計画が先立つことを教えています。 私達が今ここで礼拝しているのも、神様が私達の思いに先立ち、ここに礼拝場所を備えて、礼拝する者への道を用意して下さったのです。私達はいつも聖書から素直に学ぶ者でありたいと願っています。