説教要旨「命と息とすべてを与える神」 牧師 佐藤義子

/n[イザヤ書]42章5-9節 5 主である神はこう言われる。神は天を創造して、これを広げ/地とそこに生ずるものを繰り広げ/その上に住む人々に息を与え/そこを歩く者に霊を与えられる。 6 主であるわたしは、恵みをもってあなたを呼び/あなたの手を取った。民の契約、諸国の光として/あなたを形づくり、あなたを立てた。 7 見ることのできない目を開き/捕らわれ人をその枷から/闇に住む人をその牢獄から救い出すために。 8 わたしは主、これがわたしの名。わたしは栄光をほかの神に渡さず/わたしの栄誉を偶像に与えることはしない。 9 見よ、初めのことは成就した。新しいことをわたしは告げよう。それが芽生えてくる前に/わたしはあなたたちにそれを聞かせよう。 /n[使徒言行録]17章16-32節 16 パウロはアテネで二人を待っている間に、この町の至るところに偶像があるのを見て憤慨した。 17 それで、会堂ではユダヤ人や神をあがめる人々と論じ、また、広場では居合わせた人々と毎日論じ合っていた。 18 また、エピクロス派やストア派の幾人かの哲学者もパウロと討論したが、その中には、「このおしゃべりは、何を言いたいのだろうか」と言う者もいれば、「彼は外国の神々の宣伝をする者らしい」と言う者もいた。パウロが、イエスと復活について福音を告げ知らせていたからである。 19 そこで、彼らはパウロをアレオパゴスに連れて行き、こう言った。「あなたが説いているこの新しい教えがどんなものか、知らせてもらえないか。 20 奇妙なことをわたしたちに聞かせているが、それがどんな意味なのか知りたいのだ。」 21 すべてのアテネ人やそこに在留する外国人は、何か新しいことを話したり聞いたりすることだけで、時を過ごしていたのである。 22 パウロは、アレオパゴスの真ん中に立って言った。「アテネの皆さん、あらゆる点においてあなたがたが信仰のあつい方であることを、わたしは認めます。 23 道を歩きながら、あなたがたが拝むいろいろなものを見ていると、『知られざる神に』と刻まれている祭壇さえ見つけたからです。それで、あなたがたが知らずに拝んでいるもの、それをわたしはお知らせしましょう。 24 世界とその中の万物とを造られた神が、その方です。この神は天地の主ですから、手で造った神殿などにはお住みになりません。 25 また、何か足りないことでもあるかのように、人の手によって仕えてもらう必要もありません。すべての人に命と息と、その他すべてのものを与えてくださるのは、この神だからです。 26 神は、一人の人からすべての民族を造り出して、地上の至るところに住まわせ、季節を決め、彼らの居住地の境界をお決めになりました。 27 これは、人に神を求めさせるためであり、また、彼らが探し求めさえすれば、神を見いだすことができるようにということなのです。実際、神はわたしたち一人一人から遠く離れてはおられません。 28 皆さんのうちのある詩人たちも、/『我らは神の中に生き、動き、存在する』/『我らもその子孫である』と、/言っているとおりです。 29 わたしたちは神の子孫なのですから、神である方を、人間の技や考えで造った金、銀、石などの像と同じものと考えてはなりません。 30 さて、神はこのような無知な時代を、大目に見てくださいましたが、今はどこにいる人でも皆悔い改めるようにと、命じておられます。 31 それは、先にお選びになった一人の方によって、この世を正しく裁く日をお決めになったからです。神はこの方を死者の中から復活させて、すべての人にそのことの確証をお与えになったのです。」 32 死者の復活ということを聞くと、ある者はあざ笑い、ある者は、「それについては、いずれまた聞かせてもらうことにしよう」と言った。 /nはじめに  本日の聖書は、パウロが同行者のシラスとテモテを待つ間に滞在していたアテネの町での出来事です。至る所に偶像が置かれているアテネの町に、パウロは「憤慨した」とあります。偶像とは、広辞苑によれば、木や石や、土や、金属などで作った像・信仰の対象とされるもの・神仏にかたどってつくった像とあります。パウロはここでも、恐れることなく、福音を語り、人々と語り合い、イエス・キリストを宣べ伝えました。 /nパウロ、アレオパゴスへ  パウロの時代のアテネは、かつての繁栄は過ぎ去っていましたが、まだギリシャ文化の中心地でした。人々が集まる広場には、エピクロス派の哲学者(万物は偶然によって生じ、死はあらゆるものの終結である。死後のことについてはどんな思想も受け付けない。神々は存在するが、人間からは遠く、人間には関心をもたない。快楽が人間の最終目的である。という思想)や、ストア派の哲学者(あらゆるものが神であり、あらゆるものが神の意志であるため、あらゆるものの運命が定められている。という思想)も来ていました。彼らは、パウロの話を十分理解できなかった為、キリストの福音とは何か、今後も広場で語り続けて良いかを判断する為に、アレオパゴスにある宗教・学問・習慣などを監視するアテネの議会(評議所)にパウロを連れて行きました。 /nアレオパゴスの演説  ここでのパウロの説教は「アレオパゴスの演説」として知られる有名なものです。パウロは、アテネの人々が多くの神々の為に祭壇を作り、「知られざる神」の為の祭壇まであることに触れ、彼らは信仰心厚く、宗教的努力がなされていることを認めました。しかしこのような、自分達の全く知らない神の為にも祭壇を築くという行為の背景には「恐怖」があります。自分達が知らずに見逃してしまった「神」の怒りを買わない為にも、この神の為に祭壇を築き、拝み、感謝しておく必要があると考えた彼らに、パウロは「知らずに拝んでいるものをお知らせしましょう」と語りました。 /nパウロの伝えた神  パウロはこの演説で三つのことを語りました。一つは、知られざる神とは、すべてを造られ、天も地をも支配している神であること。それゆえ、人が造った祭壇や神殿は必要ないこと。かえって全ての人に命と息とその他すべてを与えて下さる神に私達が依存していること。二つめは、神が人間に時間と空間を与えられたのは、神を求め、神を認識し、神との交わりを持つ為であること。神は遠く離れているわけでなく、すべての人間の心が神の目の前にあること。人間が動き、欲し、行動する運動など、すべては神の創造といつくしみによっていること。三つ目には、これらの偶像神は生きたものではなく、人間の考えや技によってこしらえあげられたものである。神を求めるなら、上を見上げ、生きた神を信ずべきこと。人間は神に根差しており、探し求めさえすれば神を見いだすことができるようになっていること・・を語りました。 /n救済者である主イエスのもとに立ち帰ろう  パウロは、人間は神を見いだすことが出来なかったけれども、神様はこの無知の時代を終わらせて下さり、裁きの日を定め、その日の来る前に人間の誤りを赦し、全ての人を悔い改めに招いておられることを語りました。さらに、神様は、この世を正しく裁く御子・イエス様を遣わし、十字架の死と復活を通して、罪を赦し、永遠の命の希望にあずかるように、全ての人が、世界の審判者として、又、審判における救済者として私達の前に与えられている主イエスのもとに立ち帰り、そのお方の御心にかなうことを行うように、と勧めました。 /n説教を聞いた人々の反応  パウロはアテネの人達を偶像から離れさせ、まことの神と、復活の主イエスに目を向けるよう導きました。その結果、「死者の復活」につまずいた者、信仰の決断を留保した者、そして信じた者に分かれました。アレオパゴスの説教は、今も、全世界の教会で語り続けられ、人々を主イェスのもとに招いています。ここにおられるすべての方が、不安を抱えて生きるのではなく、復活された主イェスの招きに応え、このお方を信じ、喜びに満ちて生き、終りの日を迎えられることを祈るものです。