「話をさせてください」 牧師 佐藤 義子 

/n[コヘレトの言葉]3章1-8節 1 何事にも時があり/天の下の出来事にはすべて定められた時がある。 2 生まれる時、死ぬ時/植える時、植えたものを抜く時 3 殺す時、癒す時/破壊する時、建てる時 4 泣く時、笑う時/嘆く時、踊る時 5 石を放つ時、石を集める時/抱擁の時、抱擁を遠ざける時 6 求める時、失う時/保つ時、放つ時 7 裂く時、縫う時/黙する時、語る時 8 愛する時、憎む時/戦いの時、平和の時。 /n[使徒言行録]21章27-40節 27 七日の期間が終わろうとしていたとき、アジア州から来たユダヤ人たちが神殿の境内でパウロを見つけ、全群衆を扇動して彼を捕らえ、 28 こう叫んだ。「イスラエルの人たち、手伝ってくれ。この男は、民と律法とこの場所を無視することを、至るところでだれにでも教えている。その上、ギリシア人を境内に連れ込んで、この聖なる場所を汚してしまった。」 29 彼らは、エフェソ出身のトロフィモが前に都でパウロと一緒にいたのを見かけたので、パウロが彼を境内に連れ込んだのだと思ったからである。 30 それで、都全体は大騒ぎになり、民衆は駆け寄って来て、パウロを捕らえ、境内から引きずり出した。そして、門はどれもすぐに閉ざされた。 31 彼らがパウロを殺そうとしていたとき、エルサレム中が混乱状態に陥っているという報告が、守備大隊の千人隊長のもとに届いた。 32 千人隊長は直ちに兵士と百人隊長を率いて、その場に駆けつけた。群衆は千人隊長と兵士を見ると、パウロを殴るのをやめた。 33 千人隊長は近寄ってパウロを捕らえ、二本の鎖で縛るように命じた。そして、パウロが何者であるのか、また、何をしたのかと尋ねた。 34 しかし、群衆はあれやこれやと叫び立てていた。千人隊長は、騒々しくて真相をつかむことができないので、パウロを兵営に連れて行くように命じた。 35 パウロが階段にさしかかったとき、群衆の暴行を避けるために、兵士たちは彼を担いで行かなければならなかった。 36 大勢の民衆が、「その男を殺してしまえ」と叫びながらついて来たからである。 37 パウロは兵営の中に連れて行かれそうになったとき、「ひと言お話ししてもよいでしょうか」と千人隊長に言った。すると、千人隊長が尋ねた。「ギリシア語が話せるのか。 38 それならお前は、最近反乱を起こし、四千人の暗殺者を引き連れて荒れ野へ行った、あのエジプト人ではないのか。」 39 パウロは言った。「わたしは確かにユダヤ人です。キリキア州のれっきとした町、タルソスの市民です。どうか、この人たちに話をさせてください。」 40 千人隊長が許可したので、パウロは階段の上に立ち、民衆を手で制した。すっかり静かになったとき、パウロはヘブライ語で話し始めた。 /nはじめに  今日の聖書箇所の前に、パウロについての誤解ある噂(パウロが律法に背くように教えている)を取り除く為の、エルサレム教会指導者達の提案が記されています。パウロはその提案を受け入れて、律法に従い、誓願を立てた四人の人達と共に神殿に入りました。ところが七日の清めの期間が終わろうとしていた時、アジア州から来たパウロに敵意を抱いていたユダヤ人達がパウロを見つけ、しかもパウロが神殿のおきてを破って、ギリシャ人(=異邦人)を神殿の中に入れてしまったと叫び、群衆を扇動してパウロを捕えてしまいました。この新たな誤解はたちまちうわさとなって、町中に拡がり、町は大混乱に陥りました。 /nローマの軍隊によって死を免れたパウロ  パウロが神殿のおきてを破って異邦人を神殿に連れ込んだとの、うわさの真偽が確かめられないまま、パウロは神殿の境内から引きずり出され、裁判にもかけられず、リンチが行われ、殺されそうになりました。この時丁度、五旬祭というユダヤ教の大きな祭りの時期に入っていたので、警戒中のローマの軍隊がこの騒動を聞き、千人隊長および百人隊長と兵士達が神殿に駆けつけ、パウロの身柄を拘束しました。千人隊長は、パウロが何者で何をしたのかを群衆から聞き出そうとしますが、群衆は叫び続け、真相をつかむことは出来ませんでした。 /n「どうか、この人達に話をさせてください」  千人隊長は兵士達に、パウロを兵営に連行するよう命じますが、興奮した群衆の暴力が止まず、兵士達はパウロを担がなければならないほどでした。パウロが四人を連れて神殿に出かけたのはパウロの意志からではなく、エルサレム教会の指導者達の考えから始まったことです。その結果、大事件へと発展してしまったのです。しかしパウロは、これまで常に考え、祈り、大胆に行動してきました。思うような結果にならなくても、彼は「<span style="font-weight:bold;">神を愛する者達、つまり、ご計画に従って召された者達には、万事が益となるように、共に働くと言うことを、私達は知っています</span>」(ロマ書8:28)と語っています。パウロは今、 殴られ、傷だらけの中で、さらには、ユダヤ人の憎しみと怒号を受ける中で、近くにいた千人隊長に「一言お話しても良いでしょうか。」と話しかけたのです。そして自分がタルソス出身でユダヤ人であることを話し、自分の願いを申し出ます。「どうか、この人達に話をさせてください」。 /n「福音のためなら、どんなことでも・・」  パウロは、普通なら考えられない場面で「話をさせてくれ」と頼んでいます。それは「<span style="font-weight:bold;">福音のためなら、わたしはどんなことでもします</span>」(一コリント9:23)と語るパウロが、自分を捕えようと集まって来た群衆の何人かでも、救われる人が起こされるための行動でした。私達はここに、パウロの一貫した伝道者として生きる姿を見ます。 /n神様のご計画  パウロは、外国でもエルサレムでも、どこにいても全く変わることのない一人のキリスト者として、福音を伝える使命を帯び続けて歩みました。それゆえ神様はパウロが願い望んでいたようにローマ伝道への道をこの事件から開かれるのです。  私達も又、目に見える状況がいかにあっても、すべては神様がご存じであり、神様のご計画の中に置かれていることを信じて歩み続けたいと思います。そして今、自分がなすべきことを神様から教えていただき、肉体の限界の中でもなお「話をさせて下さい」とのエネルギーを神様が用意されていることを覚えたいと思います。