6月19日の説教要旨 「この世へ派遣される」 牧師 平賀真理子

詩編183246 ルカ9:19

 はじめに

 イエス様が12人を呼び集めたことから、今日の箇所は始まっています。この12人とは、ルカ福音書6章12-16節にあるように、イエス様が祈りの後で選んだ「使徒達」のことです。

 「悪霊に打ち勝ち、病気を癒す力と権能」

使徒達は「悪霊に打ち勝ち、病気を癒す力と権能」をイエス様から授けられました。悪霊に打ち勝ち、病気を癒すことは、イエス様御自身がなさっていました。イエス様は十字架で死ぬという御自分の定めを予めおわかりになり、「使徒達」に御自分の力と権能を与え、大事な御業の一部を引き継がせるために、弟子教育を始めようとされたと思われます。

ここで「権能」という、なじみの薄い言葉について、説明が必要でしょう。日頃の言葉で言うなら「権威」ということです。「権能」の語源には「合法的である」という意味が含まれています。決まりに従って、正しいことであるという権威が与えられているということです。その決まりとは、全く正しい権威の下にある決まりです。それは、神様から与えられた権威しかありえません。イエス様が使徒達にお授けになった「力と権能」とは、父なる神様から授けられたのだと理解できます。

 「神の国を宣べ伝えるため」「病人を癒すため」

また、次の2節には、使徒達が各地へ派遣されるのは、「神の国を宣べ伝えること」「病人を癒すこと」であるとも書かれています。「病人の癒し」では、人々は神様の力を目の当たりにできます。ルカ福音書4章18節以降に「救い主に期待されていた御業」が書かれており、病人の癒しも勿論ですが、何かに捕らわれている人や圧迫されている人を解放することも救い主に期待されています。使徒達が神の国を宣べ伝え、それを聞いた人々は、イエス様の教え(神様が自分を愛してくださり、救おうとされていること)を知り、この世での苦しみから本当の意味で解放されるのです。

 福音伝道の旅に派遣されるにあたっての3つの教え

使徒達を派遣するにあたり、主は3つの具体的な教えを語られました。

1つ目では、「必需品さえ、余分に持って行かない」ということでした。使徒達には、この世への依存をやめ、イエス様と同じように、神様のために働く者に必ず与えられる「神様からの助け」に絶対の信頼を置くよう、求められたのです。2つ目では、神様が備えてくださる人々ときちんと信頼関係を築くことを勧めておられます。この姿勢は、イエス様亡き後の使徒達の伝道の姿勢につながっていくのです。3つ目では、使徒達を拒絶する人々には、「足の埃を払い落す」というユダヤ人の風習を敢えて許されました。神様の方から「救い」を与えようとされているのに、それを拒絶する人々は、神様とは何の関係もないことが明示されるのです。私達は神様からの恵みを理解して受け取れたことに感謝しましょう。

 イエス様の御命令に従った使徒達

6節で、使徒達はイエス様の御命令に従った結果、福音宣教ができ、病人も癒すことに成功したことが記されています。それは、使徒達が、神様の力と権能を授けられたからであり、また、イエス様の祈りのお支えがあったからでしょう。使徒達はそれまでのイエス様と一緒の旅から、自分達だけの旅になり、大変心細かったでしょう。それでも、彼らはイエス様の御言葉に従いました。そして、頼りない我が身に、神様の力と権能が託される喜びを体験したと思われます。

 この世の権力者ヘロデの姿

一方、7節から9節には、この世の権力者として、ガリラヤ地方の領主ヘロデの姿が書かれています。この人はヘロデ大王の息子ですが、使徒達を派遣していたイエス様についての噂が相当気になっていたようです。その中で、ヘロデを戸惑わせたのは、イエス様は過去の偉大な預言者達の生まれ変わりだという噂、特に、自分が殺す命令を出した洗礼者ヨハネの生まれ変わりだという噂でした。自分の罪におびえる人間としてヘロデの姿を見ることができるかもしれません。また、この世の人々が、イエス様に対して、興味を持ち続けつつも、なかなか信じるところまで至らない象徴として受け取ることもできるでしょう。

 神様がイエス様を信じる人々を興(おこ)し、この世に派遣される

そんな この世から、全知全能の神様は、イエス様を信じる人々を興し、「神の国」を拡げることがおできになる御方です。使徒達に連なる私達も、神様から信じる者として興されたのです!その大きな恵みを思い起こし、「使徒達のように、今度は私達をこの世に派遣してください。」と祈れるようになりたいものです。